トラピストビール、アビィビール、ランビックビール、小麦ビールなど個性豊かな上面発酵のエールタイプのいろいろなビールがある。日本の基準ではいずれも発泡酒だが値段はすごく高い。ベルギーのビールはそれ自体がビールの種類に近いのでベルギーのビールでなく、ベルギービールと紹介したい。
ベルキービールの種類
ベルギービールのタイプ別特徴
タイプ | 特徴 |
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小麦ビール | ベルジャンホワイト、白ビールとも呼ばれている小麦と大麦麦芽を常温発酵させて作るビール、コリアンダーシードや、オレンジピールを入れたタイプが代表的で、スパイシーだが軽やかでさわやかな味だ。 |
トラピストビール | ベルギーに6ヶ所、オランダに1ヵ所ある トラピスト修道会で作られるビールで、歴史的な製法で作られ、重厚で贅沢、いずれも常温発酵、アルコール度数が高い、瓶内熟成などの特徴がある。 |
アビイビール | トラピスト修道会から許可を得て一般の醸造所が作るビール、修道院ビールとも言われている。 |
ランビックビール | 野生酵母を自然発酵させて作ったビールで、小麦、大麦麦芽、3年以上寝かした古いホップで作った麦汁を表面積の広い容器で微生物を取り込んで発酵させる。独特の酸味と香りがあるかなり上級者向きなもの、フルーツを漬け込んだ甘く飲みやすいものがある。 |
その他 | 上記分類に入らない上面発酵のエール、すっばいビール、スパイシーなビールが無数にある。また、普通のラガービールも当然ある。 |
販売中のベルギービール
ヒューガルデン ホワイト 小麦ビール
原材料は麦芽、ホップ、小麦、糖類、コリアンダーシード、オレンジピールで麦芽使用率50%以上という断り書きが書いてある。税法上は発泡酒に分類。生きた酵母を加えて瓶内で二次発酵させている。昔、アサヒのスーパーイーストというビールがあったがそれと同じで少しにごっている。オレンジの香り、コリアンダーの味を感じるがそんなにきつくなく、酵母からくるヌタッとした感じもおいしい。度数4.9%。
ヒューガルデン 禁断の果実 ベルギービール
ヒューガルデンホワイト同じ醸造所のビールで、原材料は大麦麦芽、小麦、ホップ、酵母、コリアンダー、オレンジピール、アルコール度数8.5%とかなり高め。色は濃いブラウンで熟成が進んだ酸味、甘みを感じる。わずかだがコーヒーに近い味、カラメル臭もある。コリアンダーの香りははっきり感じられるが、オレンジピールの香りは熟成が進んで甘い香りの構成要素となってるのだろうが直接的には識別できない。とても複雑な味でベルギービールの奥深さを堪能できるビール。
ヒューガルデン ロゼ ベルギービール
ヒューガルデンのロゼタイプ、ホワイトビールにラズベリーを加えたライトなフルーツビール。原材料は大麦麦芽、ホップ、小麦、糖類、果汁(ラズベリー、りんご、いちご、エルダーベリー)、コリアンダーシード、オレンジピール/pH調整剤、香料、酸味料、甘味料(アセスルファムK)、アルコール度数は3%とかなりライト。リラックスタイムにラズベリーの華やかな香りと甘味を楽しむデザートビール。
シメイレッド トラピストビール
トラピスト修道院に伝承される醸造方法の守るビール、常温発酵、瓶詰めの前にはさらに新鮮な酵母を加え瓶内二次熟成もさせている重厚なビールということだか意外に飲みやすい。原料は大麦麦芽、小麦麦芽、糖類、ホップ、酵母と書いてあり、確かに上面発酵、小麦、糖類の使用により、甘くバニラっぽい感じはするが、飲みやすい範囲で収まっている。レッドは赤い色で7%、このほか、ホワイト8%、ブルー9%とすこしづづ度数と値段が高くなる。
シメイホワイト トラピストビール
シメイホワイトは小麦だけの白ビールと紛らわしいため、ラベルにはトリプルと記されている。トリプルとは強くて色は薄いタイプのビール。シメイレッドとシメイブルーは濃褐色だがホワイトは少し濁った琥珀色、泡立ちも多い。ホップを多く使っており苦味がしっかり、ドライで切れがあるが香りは複雑、小麦のビールの香りもある。アルコール度数 8%、原材料 大麦麦芽、小麦麦芽、糖類、ホップ、酵母。
シメイグリーン トラピストビール
2012年にシメイの醸造所150年を記念して作られたビールが定番化したもの。シリーズで一番度数の高いビール、原材料は 麦芽、ホップ、スターチ、糖類 、香味料、アルコール度数10%。フルーティだが力強い味わい。
シメイブルー トラピストビール
シメイのシリーズでグリーンの次に度数の高いビール、原材料は 大麦麦芽、小麦麦芽、ホップ、糖類 、酵母、アルコール度数9%。熟成を楽しむトラピストビールなのでラベルには製造年が記されている。色は黒く濁っており、甘いフレーバだが、ラベルの日本語の説明にはローズのような花の香りとあったがチョコレートかバニラが近いような気がする。味は少し甘め、炭酸も意外に強い。度数が強いのでしっかり五臓六腑にしみる感じ。
ロシュフォール 10 トラピストビール
2021年4月に一般販売開始。ビール自体はスーパードライだか、缶の内側に気泡が生まれる加工が施されており、店で飲む生ビールのようにクリーミーな味わいとなる。そもそも、店で飲む生ビールはビール自体は缶ビールの中身とは変わらないもので、クリーミーな泡を作ってビールをカバーすることでことによりおいしくなっている。また、このジョッキ生缶の缶を再利用して、他社のビールを入れて飲んでもクリーミーなビールが楽しめる。(当然、アサヒビールは推奨していない話ですが)
ウエストマール トリプル トラピストビール
度数は強いが、色は淡い色で炭酸が強く、柑橘系のような香りと苦味、グレープルーツのピールが入っているかと思う。アルコール度数が高いので腹にしみわたる感じ。アルコール度数9.5%、原材料、麦芽、ポップ、糖類、酵母、ヴェストマル修道院はトラピストピールとしては、シメイについて生産量が多いそうだが、納得できる。
デュベル ベルギービール(ゴールデンエール)
値段の高いビールだがその価値は感じられる。ゴールデンエールと書いてあるだけあって色は僅かににごりはあるが金色。常温発酵→冷温貯蔵→瓶内常温発酵→低温貯蔵という2ヶ月の工程を経て作られており豊かな泡、アルコール度数が高いのに軽く甘い感じ。温度が上がると、りんごや洋ナシのような果実味がする。デュベルという名前は土地の方言で悪魔をさすらしい。原材料は麦芽、ホップ、糖類、酵母、アルコール度数は8.5%。
オルヴァル ビールトラピストビール
ベルギービールを代表するトラピストビールのひとつ。原材料 マチルドの泉の水、モルト、ホップ、キャンディーシュガー、アルコール度数 6.2%。発酵は三段階に別れて行なわれブレタノミュケスという野生酵母も含む10種類の酵母も使われてるとのこと。5年瓶のまま熟成が可能ということで、2012年4月に購入したが賞味期限は2016年8月だった。少しランビックに近い香りがするが意外に甘みはなく渋みがある。また、炭酸も強い。作りたてはフルーティだが、だんだん、ドライになってくるらしい。個体によりだいぶ違いがあるかもしれないが世間的には評価が高いので正直、期待はずれだった。
レフ ブロンド アビィビール
修道院では作っていないが、修道院とライセンス契約を結び修道院ビールを再現するものをアビィビールというらしい。原材料は麦芽、ホップ、コーン、糖類、苦味料、香料。度数は6.5%。税法上は発泡酒。色はブロンドという名前の通り、普通のビールと同じキレイなゴールドだが、クリーミィでぬるっとした喉越し、フルーティな軽い香りと原材料には小麦とは書いてないが小麦のビールの香りもする。アサヒが輸入しているだけベルギービールの中ではおとなし感じ
ヴェデット エクストラ ホワイト 小麦ビール
2008年に「デュベル」の醸造元が作った新しいブランドのビール、ヒューガルデン ホワイトと同じようなビールだがこちらの方がオレンジピールの香りがあり、酸味が強く、酵母のざらっとした感じがある。麦芽使用率55%で税法上は発泡酒に分類される。原材料は麦芽、ホップ、小麦、コリアンダー、オレンジピール、糖類、酵母。度数4.7%。ゆっくり飲んで鼻に抜ける香りを楽しもう。
カンティヨン・グーズ ランビックビール
ラベルに小便小僧が描かれているランビックビール。ランビックビールとはブリュッセル近郊で作られこの地域固有の自然の微生物を利用して発酵させたビール、わざと古いホップや小麦なども使われている。3年物、2年物、1年物など長期間熟成させたビールと若いビールをブレンドしてさらに瓶詰めのあと数ヶ月二次発酵させて作られたグースといわれるタイプ、ブリュセルのシャンパンとも言われている。最初の一口は糠みそのような饐えたにおいが微かにありすっぱい。ただ、それになれるとフルーツのような香りとりんごのような味を感じられる。鼻に抜けるも香りも最初は饐えた感じがしたが、飲んでいるとさわやかな香りに感じるので不思議だ。
リンデマン・チェリー ランビックビール
野生酵母を利用してオーク樽で2年間熟成させ、さらにフルーツ果汁を入れて半年間熟成を加えたフルーツランビックビール、原材料は大麦麦芽、小麦麦芽、小麦、ホップ、果汁、度数は3.5% 。チェリーの味がしっかり残り上品な甘みのあるデザート・ビール。ただ、チェリーの味が強く、裏にあるふくよかなビールの風味がもったいない。このほかに、カシス、ラズベリー、ティーなどのシリーズとなっている。
チャールズ・クイント ルビーレッド ベルギービール
スペイン、ゲルマン王国、神聖ローマ帝国の王様となったチャールズ5世の名前を冠した赤褐色のスペシャルエール。原材料は麦芽、ホップ、オレンジビール、度数は8.5%。このほかにブロンドタイプもある。糖質の異なる数種類のモルトから造られ、濃厚なカラメルテイストの甘みと苦味と旨みのハーモニーの上面発酵ビールということだが確かにオレンジの香りとルビーレッドという名前の印象のとおりの濃厚で甘口なフルボディな味でベルギービールの奥深さを堪能できる。食後にチーズとちびちび飲むビール?。
ミッケラー バーストIPA
2006年コペンハーゲンに誕生したクラフトビールのブランド「Mikkerller(ミッケラー)」のIPA(インディアンペールエール)。原材料は麦芽・ホップ、アルコール度数は5.5%。鼻腔に感じるオレンジの様な香りとしっかりある苦みが心地よい。
ミッケラー ウィートビア 小麦ビール
2006年コペンハーゲンに誕生したクラフトビールのブランド「Mikkerller(ミッケラー)」だが原産国はベルギーと表記されている。原材料は麦芽(使用率50%以上)、小麦、ホップ、アルコール度数は5.5%、英文の表記ではこのほかにオレンジピール、コリアンダーが含まれている。小麦ビール特有の泡持ちの良い柔らかな泡、コリアンダー、オレンジピールの香りの華やかな香り、スムーズな飲みこごちがバランスよく感じられる。
ギロチン ゴールデンエール
ギロチンの考案者の名前をつけたビールということだが、ラベルの絵はギロチンそのもの。瓶のデザインも赤く血のイメージでちょっと過激。ビールもアルコール度数8.5%と強い。色は淡いゴールデン、香りは柑橘系の香りと苦味が感じられる。少し辛口だが複雑な味と香りが楽しめる。
ニュートン(青りんごビール) ベルギービール
原材料は小麦、麦芽、ホップ 、りんご果汁。他のサイトの説明では小麦を使ったホワイトエールにりんご果汁を加え長期熟成させているらしいがホームページではあまり製造方法の説明はない。大体アルコール度数の高いビールの多いベルギービールではアルコール度数3.5%とかなり低い。ビンを開けるとりんごのにおいが広がるが、飲んでみるとかすかにランビックビールのようなにおいもする。りんごの果汁感は結構強い。
白濁 ヴァイツェン ベルギー
原材料は大麦麦芽、小麦麦芽、大麦、小麦、ホップ、天然白生酵母、アルコール度数5%、麦芽使用率25%未満、ベルギービールは発泡酒が多いが麦芽使用率25%未満と表示しているのははじめて見た。日本向けの商品なので税率の安い分類にしたのだろうか。しろにごりというが、普通の白ビールの濁り方。独特だがすっきりしたいい香り、かすかにヨーグルトのような匂いや、オレンジピールのような味も感じられる。麦芽使用率が少ない為か飲み口もすっきりドライで食事と飲んでもいける。酵母が飲み口にたまるよう通常とは逆に陳列させるため、缶のプルトップを下にした印刷となっている。
プリムス ラガービール
ビンの裏にはベルギービールと書いてあるが、ベルギーのビールであることは確かだがジャンルとしてのベルギービールではなく、軽めのラガービール。ベルギー人だってヘビーなベルギービールばかり飲んでいるわけはなく実際はラガーを飲んでいるのだろう。青臭い香りが印象的でチンタオビールを濃くしたような感じ。苦味は弱くとうもろこしから来るのだろうか甘みも感じられる。原材料は麦芽、とうもろこし、ホップ、度数5%。
ステラ アルトワ ラガービール
ベルギーの売上のナンバーワンのプレミアムラガーということだが、分類はなぜか発泡酒でキリンの端麗に多少ホップの香りを強くしたというような味。原材料は麦芽、ホップ、コーン、酸化防止剤(亜硫酸塩)、苦味料、香料、アルコール度数5%。
販売が終了したベルギービール
アヘル・ブロンド トラピストビール
トラピストビールの中ではもっとも新しい醸造所で作られている。原材料は麦芽、ホップ、糖類、酵母、度数は8%。色は淡いブロンドだが酵母の量が多いのか、にごっており、瓶内での熟成も進んでいるためか泡立ち、炭酸の刺激も強い。瓶の裏の日本語の説明にはフルボディビールとあるがベルギービールの中では度数の割りに濃厚さはない。香りはマスカットのようなフレッシュでフルーティな華やかなさがあるがアルコールの強さと苦味も立っている。残念ながら2023年2月現在、アマゾンでの販売は終了している。
ラ・トラップ・クアドルペル オランダ トラピストビール
オランダで作られているが一般的にはベルギービールの分類にあるトラピストビールなのでベルギービールのページにも掲載しておく。原材料は麦芽、ホップ、糖類、酵母、度数は10%。このほかにこれより度数が低いトリプル、ダブル、ブロンドなどのシリーズがある。常温発酵、瓶内熟成の濃厚なビール、甘く、カシスのようなフルーツに近い複雑な味、度数が高い為か乳酸のような香りは少なく複雑ではあるがマイルドかつ濃厚でおいしい。残念ながら2023年2月現在、アマゾンでの販売は終了している。
参考図書
ビール大全
世界のビールについて、ヨーロッパが中心になっているが網羅的に詳しく述べている。ベルギービールについても多くのページが割かれている。作者の嗜好だろうが、エールタイプ、地ビールタイプ、古い作り方、濃厚なビールを高く評価していて、大企業が作る軽いピルスナーを不当に低く評価している。と思う。たとえば、一番搾り(当時の一番搾り)とスーパードライの違いなどビール全体からすれば目に見えない誤差の範囲といっているが、これは言いすぎだと思う。と気に入らない点もあるが、歴史あるビールについて、製造方法や、その国での飲まれ方などが詳しく書かれていて世界のビールに興味がある人なら手元に置いておきたい一冊です。
ベルギービールという芸術
ベルギービールの歴史、分類、料理との相性、飲まれ方、香りの楽しみ方等いろいろな角度からの説明のほか、178の銘柄、瓶のカラー写真も掲載して11の部類に分け詳しく説明しているのは圧巻。ベルキーのピルスナーは「生理的欲求を満たすビール」でエール系ビールは「情緒的な欲求を満たすビール」と定義しています。